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聖書と紙は、古くから切り離すことのできない関係
といえます。
それは、聖書(bible)の語源が、ギリシャ語の「biblo」からきており、「パピルスに文字を書いたもの」を意味し、また、「パピルス」は紙(paper)の語源でもあるからです。 |
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聖書の語源からも想像できるように、聖書が最初に記録された紙はパピルスでした。
パピルスはエジプトにおいて紀元前3000年ごろ考え出されました。草の髄を縦に裂いて重ね、シート状にして作られます。一時期は全盛を誇るパピルスですが、その材質から湿度に弱く、また乾燥しすぎると、もろくなってしまうことから製本には適しませんでした。
そのため、耐久性と共に材料がどこででも入手できることから、次第に羊皮紙(ようひし)が使われるようになりました。
羊皮紙はその名の通り、「羊の皮」でできた紙です。子羊の皮を水につけて、石灰乳(水酸化カルシウムの懸濁液)で余分なものを落とします。そして木枠で乾燥させ、表面をなめして鉱物の粉をすりこむと、不透明なしっかりとした紙ができあがります。
羊皮紙は、丈夫で冊子本を作るのに適していて、さらに保存性にも優れていましたので、紙がヨーロッパに伝わるまで聖書に使用され続けました。
しかし、羊皮紙にも問題がありました。それは、その製作に大変な手間がかかること、そして、きわめて高価なものであることです。聖書一冊を書くのに羊500頭分の皮が必要だったとも言われています。聖書のページ数が膨大なため、羊皮紙を使用した聖書は重く、とても嵩ばってしまいます。
紙を薄くしたい、しかし、あまり薄くすると、裏側に印刷された字まで透けて読みづらくなってしまう・・・・そんなジレンマがあったようです。
そこで、この問題を解決するために生まれたのがインディアペーパーでした。 |
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羊皮紙を使用した聖書は、重く嵩ばることが問題点でしたが、これを解決する答えが、1860年頃、イギリス商人(学生ともいわれています)が、インドからロンドンへ送った「ある紙」にありました。その紙は極めて薄く、それでいて不透明であり、非常に強靭なものでした。
支那あたりの原産ではないかと、その紙を探しましたが見つけることができなかったため、それに似た紙を苦心に苦心を重ねて自国で生産しました。それがインディアペーパ−です。
インディアペーパーは別名、バイブルペーパーとも呼ばれています。まさに、聖書のために生まれた紙といえます。
この技術は、後に日本にも輸入されて、英和辞典などの紙として使われていますが、インディアペーパーの見本となった紙は、実は和紙の雁皮紙(がんぴし)だったようです。
雁皮紙は雁皮というジンチョウゲ科の植物の皮で作られた紙です。別名で斐紙(ひし)とも呼ばれ、日本独特の製品です。その質は優美で光沢があり、平滑にして半透明で粘着性に富んでいるので、腰の強い緻密な紙となります。
雁皮紙は上品に仕上がり、薄くても頑丈、また裏側への墨の滲みもないので、絵巻物や流麗な公家風のかな書き文書、また、仏教経典や書籍などにも使われました。
ところで、インディアペーパーの見本となった紙は、ある時期までは中国原産の紙として紹介されていたようです。
インディアペーパーができた経緯を知ったある日本人が、「当時のインドにも中国にもこんな紙があったはずがない。両面印刷のできる不透明で強靭な紙は、日本で漉かれた和紙に違いない」と、不透明で極薄の紙を求めて調べたそうです。
すると、江戸時代、聖教類を印刷し、携帯に便利なポケット版の用紙として重宝がられた、摂津名塩(兵庫県西宮市塩瀬名塩)の泥入り鳥の子にほぼ間違いないとの結論に達し、英語による講演や英文著書の中で公表を続けたそうです。その結果、日本に起源を持つ紙と紹介されるようになったようです。
※「鳥の子紙」は雁皮紙の1種です。製品の色が鶏卵の薄黄色に似ていることから、このように呼ばれています。 |
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1860年頃に誕生したインディアペーパーは、その後、改良が続けられ現在に至ります。
インディアペーパーは、薄く不透明度が高いという特徴があります。薄く抄くために長繊維の材料を使用しています。
昔は麻や木綿繊維が主体でしたが、現在は木材パルプが主体です。炭酸カルシウムなどを多量に加えて不透明性を高め、薄くても破れにくい工夫がなされています。
また、インディアペーパーには、中性紙で長期保存が可能であり、強靱な紙であると共に印刷インキの吸収性が良いという特徴があります。そのため、インディアペーパーの用途は聖書にとどまらず、辞書や六法全書にまで広がります。
現在では、漢字を使用する言語の辞書にはインディアペーパーでなければ、字切れを起こして読めないことがあるので、辞書には不可欠な紙といえます。
最近は白よりも淡クリ−ム色が多く使われています。これは目とのなじみを良くし、疲れを少なくするためです。また、辞書をひく時のめくり適性が良いことや、本を開いた時に紙が倒れて辞書が見やすくなるように、紙にしなやかさを持たせています。
「聖書」をキーワードに、そこで使われてきた紙を見てきましたが、「聖書」は人との生活と密接にかかわっているからこそ、そこに使われる紙も聖書にとって最適なものにと改良されてきました。
紙は人々の生活に欠かすことのできないものです。私たちの周りにある紙も、利用する上で最も適したものになるよう日々改良が続けられています。 |
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