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紙の寿命がどれくらいかご存知ですか?
一般的には、おおよそ和紙が1000年、洋紙が100年と言われています。
洋紙については、1970年代に劣化の問題が起こりました。アメリカ、ヨーロッパで、図書館等に収められた古い蔵書に次々と激しい劣化が見られ、手にとって広げただけで本が修復できないほどボロボロになってしまいました。劣化しはじめた本の数は、数十万、数百万冊に及びました。それは、1850年以降に発行された書籍に限ってのことでした。
日本でも、1980年代に洋紙の劣化問題が取り上げられました。図書館に保存されている書籍が、50年も経たずに茶色く変色し、ひどい場合には触れただけで粉々になってしまうことが報告され、問題となりました。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。
紙の劣化の原因は、温度や湿度の変化、光、微生物(虫やカビ)などもありますが、主な原因は紙の中の硫酸です。
印刷用紙にはインクの滲みを止めるため、サイズ剤が使われています。サイズ剤の多くには松ヤニ(ロジン)が使われていますが、このサイズ剤をパルプに定着させるのに一番良いものが硫酸アルミニウム(硫酸バンド)です。硫酸アルミニウムは紙の中で、加水分解して硫酸を生じ、紙を酸性にします。この硫酸が紙の繊維であるセルロースを傷め、繊維のつながりを断たれた紙はボロボロに崩れてしまうのです。

硫酸アルミニウムが使われるようになったのは、ヨーロッパにおいて工業化に伴う紙の大量生産技術が開発された1850年代以降です。
日本で最初の洋紙が生産されたのは1874年(明治7年)と言われていますので、日本で作られ使用されていた洋紙は、まず酸性紙であると疑う必要があります。また、太平洋戦争中あるいは終戦直後に製造された紙は、粗悪な材料が使われており、劣化の進行が特に激しくなっています。

この紙の劣化問題への対応策として、硫酸アルミニウムを使わない中性のサイズ剤が開発され、これを使用した中性紙が製造されました。中性紙は酸性紙の3〜4倍の寿命を持つと言われています。
保存性が要求される記録用紙の場合は、大気中の酸を中和するため紙にアルカリ性の炭酸カルシウムを加えますので、実際には弱アルカリ性となります。日本では、中性から弱アルカリ性の紙を中性紙と呼んでいます。


現在では、書籍など長期に保存される紙を中心に、中性紙の使用が増えています。
国立国会図書館が定期的に実施している日本国内における図書の中性紙使用率の調査によると、現在、民間出版物のうち図書の中性紙使用率は80%前後で安定しています。一方、国や地方公共団体の刊行する官庁出版物における中性紙使用率も、1997年頃までは50%前後と低い値を示していましたが、2001年の調査では80%を超えました。

中性紙か酸性紙かを見分けるのに、中性紙チェックペンというのがあります。サインペンとほぼ同じ形で、インクの代わりに pH 指示薬が入っています。中性紙の場合は変化しませんが、酸性紙の場合は瞬間的に色が変わります。
この他にも中性紙か酸性紙かを見分けるのに、食酢に紙の小片を入れて割箸などで沈める方法があります。中性紙の場合はごく小さな泡が発生します。また、紙を燃やして黒い炭化物ができるのは酸性紙で、白い灰になるのは中性紙です。酸性紙は硫酸イオンがあるので繊維が炭化します。